東京朝顔研究会 第二回大輪朝顔講習会(要旨)
1 本鉢定植の最適時期
6月25日から27日頃、本葉6〜7枚で根回りが良い状態。
2 本鉢定植
本鉢は黒釉香炉鉢5号鉢。
培養土は腐葉土3、赤玉土(小粒)3、軽石(小粒)3、もみ殻燻炭1 元肥は無し
作業場所は直射日光の当たらない場所
3 移植手順
- 黒釉香炉鉢5号鉢の鉢底に鉢底網を置く。
- 鉢底石として軽石(中粒)を約2cmの厚みに置く。その上に培養土を少し盛る
- 小鉢の苗の軸を人差し指と中指で挟み小鉢を逆さにして、もう片方の手の指で小鉢の底穴から押し苗を抜く。
- 抜き取った苗の双葉の付け根を本鉢の縁と同じ高さに合わせ、苗の軸が本鉢の中心に据える。
- 苗と本鉢の隙間に培養土を入れて、本鉢を2〜3回トントンとたたき土を落ち着かせる。微温湯をたっぷりと撒く。
- 夕方、メネデール希釈液200倍を鉢底から流れ出るくらいにタップリと撒く。
- オルトラン粒剤少々、溶リン1つまみ、固形肥料2個を置き肥する。
4 水やりと水肥やり
- 定植後2日間は水も水肥も要りません。
- ハイポ(青)1000倍希釈液を撒いたら翌日はハイポ(赤)500倍希釈液を100mlずつというように交互に撒きます。
- 7月3日から10日までは、ハイポ(青)1000倍とハイポ(赤)500倍の混合液を作り100mlずつ撒きます。9日と10日には亜リン酸を少々散布しました。
- 11日から18日の肥料打ち切りの日までは、ハイポ(青)とハイポ(赤)の750倍混合液を作り、1日に朝昼2回施肥をする。
- 雨でも雨合羽を着て施肥をします。
- 19日からは多量の水を朝昼3時の1日3回撒きます。鉢の中の肥料を抜く為です。鉢の中に肥料分が多く残っていると花弁が切れ切れになったり肥料あたりになります。
5 鉢回し
根が偏らないように回数が多ければ多いほど良いですが、何日に1回とか曜日を決めて鉢回しをします。
6 殺虫剤散布
1週間に1回くらいの割合で、虫害を予防したり殺虫するために殺虫剤を散布します。
オルトラン粒剤、ベニカ]ファインスプレー、マラソン乳剤1500倍、アファーム1000倍。
7 本蔓仮摘芯
7月3日か4日頃、本蔓仮摘芯をする。本葉10枚目が開いたら9枚目の葉を残し仮摘芯をします。
8 本蔓本摘芯
仮摘芯の後、1日おきに8枚目、7枚目を残して摘芯をして、7月10日頃には本葉7枚目を切取り本葉6枚目が残るようにします。これを本蔓本摘芯と言います。
9 肥吸葉
残した本葉6枚目を肥吸葉といい、本葉の肥吸葉には残した3本の子蔓に均等に養分を行きわたらせる役目があります。根から上がってきた養分の最後の葉なので葉が少し大きくなります。
10 脇芽取り
肥吸葉の脇芽は本蔓本摘芯の時に摘み取ります。さらに双葉の脇芽と本葉1枚目と2枚目の脇芽は不要なので摘み取りましょう。
11 子蔓三本仕立て
本葉3枚目、4枚目、5枚目から伸びている子蔓を仕立てていきます。本葉6枚目を肥吸葉としたので本葉3枚目、4枚目、5枚目から出た3本の子蔓は大体そろって伸びていきます。鉢の上から苗を見た時に出来れば120度角度に子蔓が伸びていくのが良い。太陽光が葉に平均に当たるからです。
12 蕾の確認
7月12日頃になると子蔓の長さは2~3cmほどになります。子蔓と子蔓の葉の間から小さな蕾が目で確認できるようになります。蕾が確認出来てから18〜20日後に開花すると言われています。ですから7月8日から16日までに確認できた蕾が丁度展示会の会期中に開花することになります。
13 子蔓仮摘芯
7月19日から21日頃、本鉢の鉢べりから先に出ている子蔓の先端を摘みます。
14 子蔓本摘芯
7月21日から23日頃、子蔓5枚目の葉を切取り子蔓4枚目の葉を残し肥吸葉とします。子蔓本摘芯をしたことで、子蔓の葉や蕾がだんだん大きくなってきます。
15 水苔張り
梅雨明けすると日差しが強くなり鉢土が乾きやすくなるので、土の表面に水苔を張り保水をします。
16 蕾の選定
1本の子蔓に2個ずつ蕾をつけ、3本の子蔓では6個の蕾をつけると、花の大きさと開花の回数が確保できる。子蔓4枚目についた蕾は鉢こぼれになるので除外する。
17 殺菌殺虫剤散布
展示会に朝顔の病気や害虫を持ち込んではいけません。そのために私は搬入日前、トップジンM1000倍やダニ太郎1000倍を散布しました。
18 肥吸葉切取り
肥吸葉の役目を終えた本葉6枚目の肥吸葉を切取り出品します。本葉3,4,5枚目から出ている子蔓の蕾に花を咲かせるための力を集中させるためです。展示会に本鉢を搬入してからでも間に合います。
19 受け葉
肥吸葉の切取りには子蔓3枚目の葉が受け葉の形になるように切り取ります。受け葉とは切込み作りで、子蔓の先端つまり子蔓3枚目の蕾のついた葉のことです。開花時に花弁を下から支える形になります。
20 展示会場へ搬入
展示会開催日前日の7月27日に出品本鉢を会場に搬入します。
21 展示会場での手入れ
- 水遣り。
- 咲き終えた花の殻を摘み取ること。
- 蕾が日光に当たるように葉の日陰を作らないこと。
- 朝顔の花は最終的には水で咲かせるもの。ただし開花前日夕方の大量散水は控える。
22 切込み朝顔の作り方要点
- 小鉢期は根張りと本蔓の節間が詰まった作りをする。それには水や肥料をやり過ぎない抑制栽培をすること。
- 本鉢期では子蔓3枚目の葉が鉢へり以内で収まることと子蔓に蕾をつけること。
- 肥料止め以降は大量の水で鉢土に肥料分が残らないようにすること。
- 虫が蕾の中に潜り込まないように殺虫剤で予防すること。虫を見つけたら排除すること。
- 太陽のエネルギーを葉や蕾が十分に受けられるように、葉が重ならないようにすることと、蕾が葉に隠れないようにすること。
- 子蔓を形のいい方向に誘導するコツとして、針金で作ったU字形、J字形の蔓押さえを蔓に引っ掛けて鉢土の挿して形を整えます。
- 栽培期間中は切込み苗を両手で包み込むように優しく手のひらで軽く抑えると、手のひらには葉のひんやり感が感じられます。葉には手のひらから暖かさと愛情が伝わると思います。そうすると苗の形も花の咲き方も良くなることにつながると思います。
23 日比谷公園超大輪朝顔展が7月28日から8月3日まで開催
1鉢でも良いですので展示会に出品してみよう。それが栽培技術のワンランクアップの近道です。
展示会では名人や先生方、先輩方から水撒き体験や手入れの指導を受けることが出来ます。
また、同じ朝顔の趣味を持つ人たちの輪に入って朝顔談義に花を咲かせ楽しい時間を過ごせることになるでしょう。
24 展示会後
自宅栽培場で種つくりをしてみよう。『種は命』です。楽しみも増えます。
平成29年切込み朝顔栽培記録
月 |
日 |
温度 |
気象 |
苗の様子 |
作業内容 |
肥料・消毒 |
液肥 |
水・液肥量 |
備考 |
6 |
27 |
25.8 |
曇 |
本葉4〜5枚 |
|
|
ハイポ(青) |
30ml |
1,000倍 |
28 |
25.7 |
曇 |
本葉6枚 |
|
|
|
|
|
29 |
23.6 |
晴 |
本葉5枚〜6枚 |
|
|
ハイポ(赤) |
30ml |
1,000倍 |
本鉢定植18鉢 |
固形肥料小粒2個 |
|
|
メネデール200倍100ml |
30 |
23.6 |
曇 |
|
本鉢定植 8鉢 |
固形肥料小粒2個 |
|
|
メネデール200倍100ml |
7 |
1 |
28.7 |
曇 |
本葉5.6.7枚 |
7鉢本鉢定植 8鉢置き肥 |
オルトラン |
|
その他水30 |
メネデール200倍100ml |
2 |
32.3 |
曇..晴 |
|
|
|
ハイポ(青) |
100+水30+15 1,000倍 |
|
3 |
32.2 |
曇..晴 |
本葉6〜7枚 |
|
|
ハイポ(赤) |
100+水30 |
750倍 |
4 |
30.3 |
曇 |
|
|
|
ハイポ(青) |
100 |
1,000倍 |
5 |
31.3 |
晴 |
本葉8〜9枚 子蔓の芽が出始めた |
|
|
青1,000+赤500 100 |
|
混合 |
6 |
30.8 |
晴 |
|
|
|
青1,000+赤500 100 |
|
混合 |
7 |
30.6 |
晴 |
|
|
|
青1,000+赤500 100 |
|
混合 |
8 |
32.7 |
晴 |
本葉10枚以上 |
本葉10枚で本蔓仮摘芯をした |
|
青1,000+赤500 100 |
|
混合 |
9 |
32 |
晴 |
|
本葉8枚残し 鉢回しW |
ベニカ]ファイン |
青1,000+赤500 100 |
|
亜リン酸少々 |
10 |
33.3 |
晴 |
子蔓伸び始めた |
本葉7枚残し |
|
青1,000+赤500 100 |
|
亜リン酸少々 |
11 |
32.8 |
晴 |
蕾兆候 |
本葉6枚目を肥吸葉に |
マラソン1500倍 |
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
12 |
31.2 |
晴 |
|
|
|
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
13 |
32.1 |
晴 |
子蔓2〜3cm |
|
|
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
14 |
32.9 |
晴 |
蕾はっきり確認 |
|
|
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
15 |
33.1 |
晴 |
蕾4個以上だと10鉢、3個以上だと20鉢確認 |
|
|
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
16 |
33.4 |
晴 |
展示会のための打合せ会 |
|
|
青+赤 |
150+100 |
750倍 朝昼2回施肥 |
17 |
34.5 |
晴 |
|
|
|
青+赤 |
150 |
|
18 |
32.2 |
曇小雨 |
子蔓が鉢外まで伸びた |
|
|
青+赤 |
150 |
肥料打ち切り |
19 |
31.2 |
晴 |
花柄を含めた |
子蔓を仮摘芯 21鉢 |
アファーム1,000 |
|
200+200+200 |
以降多量の水微温湯 |
20 |
32.5 |
晴 |
蕾全長〜3cm |
子蔓5枚目の葉を残す |
|
|
200+200+200 |
朝昼3時の3回 |
21 |
34.2 |
晴 |
|
水苔を張る |
|
|
200+200+200 |
朝バケツに貯水 |
22 |
33.4 |
晴 |
蕾3〜3.5cm |
子蔓2本の4枚目肥吸葉に |
ベニカ]ファイン |
|
200+200+100 |
|
23 |
28.1 |
曇 |
5cmも出た |
子蔓3本とも肥吸葉にした |
|
|
200+200 |
|
24 |
31.3 |
曇 |
6cmも出た |
|
|
|
200+200+100 |
|
25 |
29.8 |
曇 |
7cmも出た |
子蔓の肥吸葉をカット |
トップジンM |
|
200+200 |
アファーム1,000倍噴霧 |
26 |
26.9 |
小雨 |
|
本蔓肥吸葉をカット |
ダニ太郎 |
|
200+200 |
1,000倍 |
27 |
24.4 |
曇 |
初花 彩華比金 |
展示会搬入日 |
|
|
|
|
28 |
32.9 |
曇 |
|
展示会初日 |
|
|
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他の図表 省略
1 大輪朝顔栽培の要点
- 栽培環境の改善
- できるだけ日当たりよくの良い場所で栽培する。
- ほどよい風とおしとなるように工夫する。
- 夜間照明が当たり明るい所は避けるか、夜間照明が当たらないように工夫する。
- 栽培棚を補強する。
- 毎日よく観察し、記録を取っておく。
- 展示会10日前までは液肥を毎日施用する。ただし蕾付きの時期は細心の注意を。
- 展示会10日前までは具合を見ながら液肥濃度を調製しながら、10日を切ったら液肥をやめ、ざばざばと大量に水がけする。
2 培土・鉢などの準備
- 培土を用意して配合しておく。各種培土原料は篩の上に残ったものを用いる。初めての栽培ならば、水はけの良さを勘案して例えば、腐葉土(堆肥):赤玉土(中粒):軽石(中粒):籾殻燻炭=4:3:2:1に配合する。配合経験があれば、前年の培土の乾き具合を思い出し、乾き過ぎであったなら軽石の割合を減らし、腐葉土、赤玉土の割合を増やす。湿りすぎであったならば赤玉土の割合を減らし、軽石の割合を増やすなど、改善を試みる。培養土は、7号鉢で10鉢あたり35L用意しておけば十分足りる。
- 鉢、支柱、その他栽培に近々必要な道具(サナ、ゴロ、薬、肥料)を栽培予定数分揃えておく。
- 鉢にゴロ(鉢底石)を敷く。釣鐘型鉢、深駄温鉢の場合はゴロを鉢底が見える化見えないか程度(1列)に敷く。横筋入り行灯鉢の場合、ゴロを3cmの深さに敷く。
- ゴロが隠れる程度に培土を敷く。温水で鉢底の培土を湿らせる。
- 鉢の中央に過燐酸石灰、アブラムシ防除用の粒剤を一つまみ置く。
- 鉢底隅に乾燥肥料親指大を2粒相当、砕いて置く。肥料は培土で軽く覆っておく。
3 本鉢への定植の手順
本鉢定植期(6月20日前後)
- 鉢底から根が見えるものや、目安として本葉7〜8枚、軸元をつまんで持ち上げようとすると鉢ごと持ち上がりそうな苗は根が張っている。
- 事前に小鉢の縁の培土をよく湿らせておく。
小鉢の側面を手のひらで数回勢いよく叩くと、鉢に張り付いていた根が?がれる。
- 人差し指と中指の間に苗軸をはさみこむようにして鉢を逆さにし、鉢底穴のサナを押し、小鉢をそっと持ち上げて苗を抜く。
- 鉢から苗を取り出したとき、根が培養土周りを巻いている状態(根鉢という)であれば7号鉢に植え替える。根鉢が回っておらず、ぱらぱらと土が落ちてくるような場合、2〜3日様子を見てから定植するとよい。一方、根鉢がぎっしりと巻かれていて、鉢土が見えないようなら、急ぎ植え替えたい。


- 根鉢廻りを湿らせ、小鉢苗の中心を根鉢のまま本鉢の中心に据える。
- 横から見た双葉の位置が、鉢の最上部から出ない程度に置く。そして最初から培養土を鉢いっぱいに入れるのではなく、鉢縁は少なめに入れ、できるだけ培養土を少なくする。
- メネデール100〜200倍液をたっぷりとかけ、培養土を落ち着かせる。
- 30分〜1時間ほど日陰に置き、あとは日なたに出し、日光に当てる。
この作業は晴れた日の午前中に行うとよい。
- 梅雨時期に当たるので、鉢の下に割り箸など下駄を履かすと鉢底に風が通るようになる。また、鉢間を拡げ、鉢に風が通るようにする。
雨だからと、鉢土を乾かしたいあまり、軒下に取り込んではいけない。空の明るさを少しでも葉に浴びさせたい。
4 本鉢栽培
1) 本鉢初期・・・植替後〜1週間
- 7号鉢植え替え後は、活着(新しい芽が動き出す)したのを確認できるまで様子を見る。
- 活着したら、小鉢期と同様、節水(抑制)栽培を心がける。かん水(液肥)用の水は、ぬるま湯がよい。かん水は午前中のうち、鉢土表面が乾いてから行うようにするとよい。夕方表土が乾くようにその日の天気具合を勘案して量を調節する。目安は30〜40ml。
- 夕方には表土が乾く程度のかん水量を想定して与える。かん水量の目安は、その日の日照、温度、湿度、風の強さをその都度勘案する。新しい本葉が開き、枚数が増える毎に、少しずつ量を増やすイメージで。
水不足の場合、本葉が下を向いてしんなりするまでは耐えられる。葉の縁が薄く(しおしおに)乾いた感じになると乾き過ぎ。その見極めが大事。一方、夕方まで水分を残す日が続くと蔓伸びが激しくなる。徒長癖が着き治らないので、追肥の濃度を少し高め、量を少なめに与えると蔓伸びを多少抑えることができる。
- 定植後活着したら、窒素3〜5%前後の液肥を、かん水代わりに1,000倍に薄めて与える。雨降りでも実施する。量は、小雨なら少なめ、大雨なら標準的な量を与える。硫酸加里、苦土石灰を、数粒鉢土の上に載せる。
- 活着が確認できたら、翌日、固形肥料を2個追加する。半埋めにするとよい。
- 定植5日後あたりから液肥濃度を500倍にする。
- 本葉1枚目、2枚目から出る腋芽は除去する。
- 鉢土から白い根が這い出し始めたら、根が隠れる程度に少しずつ追加する。
- 6月25日あたりから蔓が急激に伸び始める。液肥量を少なめに与えることで、蔓伸びを抑えることができる。
2) 本鉢前期・・・〜7月初旬
- 定植後10日もすると、本葉が10枚に増える。
- 液肥の量を徐々に増やしていく。
- 本葉の色具合の様子、斑の入り方、打ち込みの入り方、蔓伸び具合、芽先の色具合の変化を観察しながら、窒素量を調節する。
- 6月29日〜7月7日頃、葉柄のまたの部分には、目には見えないが、展示会に咲く花の細胞が作られる頃となる。このとき窒素が効き過ぎていると、花芽になるはずが、葉芽になってしまう。葉の色が濃い、斑が急激に入るようになってきた、打ち込みが芽先に近い葉にも入ってきた、節間が詰まってきた、芽先が白くなったなど、窒素が効いている兆候が表れたら、窒素の割合は少なく、りん酸の割合が多い肥料に切り替える。または窒素を含まない、りん酸を含む肥料に切り替える。りん酸一加里(2〜5g/10L)を、液肥と混和して与える。
- このころまでに本葉3〜5枚目に出た子蔓3本を残し、他の脇蔓(葉芽)を取り除いておく。脇蔓(芽)は一気に全て取らず、一日に一つずつ取り除くようにする。
- この時期になると、蕾が着く。蕾が全く着かず、葉芽ばかりであれば、かん水(液肥)量を減らしたり、りん酸が多めの肥料を追肥したり、短日処理を行う。
3) 本鉢中期・・・7月初旬〜7月中旬
- 7月6〜19日頃までは液肥を朝だけでなく、一日二回朝夕に与える。濃度は500倍、量は朝湿らせた培土が夕方には表面が乾く程度。
- 支柱を設置する。行灯を小槌で強く打ち付け鉢底まで差し込む。蔓が巻けるような長さであれば蔓を巻き始める。蔓は朝巻こうとすると折れやすい。午後しんなりした頃に巻くと、蔓折れしにくい。ある程度伸びたら、蔓に柔軟性があるうちに、蕾が外を向くように巻き方を強めにしたり弱めにしたりして調整して巻く。先端まで巻く必要はなく、調整しながら、ゆったりと巻くと良い。支柱から輪に90度に曲げて巻く際は、園芸用ビニタイ(針金)を大きな輪にして蔓をゆるく抑え、蔓の曲がり癖をつけておく。

- 7月8〜10日頃には初花が咲き始める。この日に見え始めた花芽は、会期中に咲く花となる。
- 7月8日頃には会期最終日に咲く花芽が確定する。一加里は打ち切る。
- この期間の間に3本残した子蔓のうち、優れている子蔓を残し、そうでない子蔓芽先から徐々に切り戻す。切り戻す子蔓は、蔓の長さが短すぎるもの、節間が広がりすぎたもの、蕾のあまり着いていないもの、蔓の細いもの、葉形のおかしいものなどの各兆候を観察し、優れていないものから切り戻していく。毎日少しずつ切り戻し、本蔓に負担をかけないようにする。一本目を取り除いたら、二本目を同様に切り戻す。
- 二本目を切り戻した後、本蔓の調子が良ければ三本目の子蔓を切り戻し始めるが、その頃までに本蔓の調子がおかしくなってしまった場合は、本蔓に見切りをつけ、三本目の子蔓を残し、本蔓を切り戻す。本蔓を切り戻す場合は本葉7枚目を残し、8枚目まで切り戻す。
- 7月15日頃、本蔓仕立てのままなら本蔓のみ、子蔓に切り替えたならば本蔓を切り戻し20日頃までに子蔓一本に整理する。なお、蔓伸びが早く、天頂まで届いてしまいそうならば蔓の整理を遅らせる。一方、蔓伸びが遅ければ蔓整理を前倒しすることで、巻き付ける蔓の開花時期を調整できる。
- 7月15〜19日頃には、上記に加え、尿素溶液を施用すると、蕾が大きくなる。尿素濃度は、0.1〜0.5g/リットル。副作用としては葉も大きくなる。
- その他脇芽(葉芽)は見つけたらすぐ取り除く。蔓は7月10日頃に2段目立ち上がり、17日頃に3段目立ち上がりとなるように肥培(かん水)量、濃度、回数で調節する。7月20日頃に天頂に届けば理想。
4) 本鉢後期・・・7月下旬〜展示会期間
- 予定どおりの生育なら、置き肥、埋め肥を取り出し、追肥も切り、多量の水をかける管理に切り替える。一鉢あたり300〜500mlのぬるま湯または汲み置き水をかける。根が十分に張っていれば、水をたっぷり吸える環境にすることで、花弁の伸びが著しく良くなる。
窒素分が残っていると、花弁縁に紅色がつく、褐変する、縮れが出るなど肥料中りが出る。また、葉が大きくなる。
一方、花が小さいままの場合は、肥料が足りない。追肥をしばらく続ける。置き肥、埋め肥は取り出してしまう。花縁に肥料中りが出たら追肥を打ち切る。
- 蔓が天頂を過ぎたら、先端の芽先を摘み、芯止めをする。芯止めをすると花が大きく咲くようになる。芯止めしてからも蔓は各節が伸びていく。15cmほど伸ばし、15cmを越えたら、蔓を一節毎に切り詰めていく。芯止めすると最も上の葉が肥吸葉の役割をする。残った肥料分や水分を吸い、その肥吸葉は肥大する。花の肥料残り具合や、草姿全体のバランスを見ながら、肥料残りの兆候が消えた時に、肥吸葉を切り落とす。
- 一方、展示会期近くになっても蔓が上段まで届かない場合がある。液肥濃度を濃い目にして施用する。葉色を見ながら、どす黒くならないほどに濃度を調製する。その際、水量はたっぷりと与える。節間は伸びるがそれでも構わずそのまま伸ばし、展示会期中に頂芽を芯止めできるようにする。会期後半に大輪花を咲かせられればよい。
5 開花期の管理
- 順調な生育ならば、7月8日〜19日あたりまでに花が咲き始める。初花は小さいが、徐々に大輪となる。双子の蕾があるときは、小さい方の蕾を欠き取る。
- 梅雨あけ後、たっぷりと水をかけてあげる管理に切り替える。
- 花が咲き終わったら、元から摘むと、次の花が大きく咲くようになる。
- 咲き具合を観察する。
花が小さくしか咲かないようであれば、また、葉の色が淡ければ、液肥をかけ続ける。
一方、花縁に縮れがあったり、曜の縁が元の色と異なり紅がつき、併せて葉の色が濃く黒ずんで見えるようであれば、培土の置き肥を取り除き、液肥は直ちに中止し、水をたっぷりと与える。症状が改善しない場合は水を張ったバケツに鉢ごと浸し、培土中の窒素を抜く。
- 蔓に葉芽(脇蔓)があれば、その都度欠き取る。
- 出展鉢の選別
- 軸の根元が太いものは有望
- 葉の翼片が2〜3枚と多く、横に長く張り出したもの、肌脱ぎが広く出た形の蝉葉が多く着いたものは有望
- 葉全体に打ち込みが強く出たものは有望
- 葉が厚く、鈍い艶があり、葉脈が力を込めたようにグッと浮き出ているものは有望
- 蔓の上位葉に斑が強く出ているものは有望
- 蕾がタマネギのように横に張っているものは有望
- 展示会前、7月20日までに17cm径以上、24日までに18cm径以上、26日までに20cm径以上に咲くものは有望。さらに、20日までに19cm径以上、26日までに21cm径以上咲くものは特に有望
急な天候の変化に対応すべき環境改善(対策)
1.日照が強いとき | 水やり量増 |
寒冷紗(遮光) |
鉢間を拡げる |
2.雨が降ったとき | 1)小雨の場合 | 水やり中止 |
水やり減 |
雨除け |
2)豪雨の場合 | 軒下避難 |
屋内避難 |
3.温度対策 | 1)寒いとき | 二重鉢 |
保温材を鉢に巻く |
2)暑いとき | 二重鉢 |
鉢に寒冷紗を巻く |
鉢縁にアルミホイルを巻く(葉焼け防止) |
4.湿度対策 | 1)蒸し蒸し するとき | 鉢間を拡げる |
高台下に下駄を履かせる |
2)乾燥するとき | 棚床にシートを敷く |
棚に散水 |
庭に散水 |
5.風対策 (風が強いとき) | 鉢間寄せ |
防風シート |
軒下避難 |
屋内避難 |
用語解説
本葉が出るに従ってそのまま伸ばしていく。本葉3、4、5枚目から出る子蔓もそのまま伸ばしていく。
参考 子蔓仕立て
本葉8枚で蔓先をつまむ。(仮摘芯)。その後、本葉3、4、5枚目から出る子蔓を伸ばしていく。
- 肥吸葉…蕾の着いている葉の先に1枚残しておく葉のこと。
- 肥吸葉以外の葉の肥大化を抑え、本葉3、4、5枚目から出る子蔓の成長を均等化する。
短日処理(生殖成長を促す)
花芽形成を促進させるための処理方法。暗期を長くすることで花芽を付けさせようとする方法。
- 本葉の下葉(しっかり成長した葉)の1枚をアルミホイルでそっくり包み、14時間ほど葉を暗く維持することによって効果が得られる。
- 水分を絞ることができさえすれば、短日処理は必要ない。
栄養生長と生殖生長
- 栄養成長…植物が茎・葉・根など栄養器官のみを作ること。
- 生殖成長…花芽を作り、花を咲かせ、実を結んでタネを作ること。
水分を絞ることで生殖成長を促すことができる。
花芽を持たせるために…水分を抑制する。短日処理。過リン酸石灰撒布。
脇芽の処理
本蔓仕立て
- 早めに他の蔓を処理しても可。子蔓仕立ての場合、芯止まりは起こしにくい。
- 除去の判断材料…蕾着きが良いもの、蔓が太いもの、葉の形が良いもの、7月後半に蔓が届きそうなものを残し、そうでないものから除去する。
- 蔓の巻き方…左巻き。内から外へ。行灯支柱…市販の支柱可。
- らせんの蔓長…180p、行灯の蔓長…150p:L
- 節間長の算定例…(L-天頂までの残りの長さ)/(7/20頃までの日数)≒5〜7cm
- 鉢表面が乾いたら(実際には中はそれほど乾いていない。)、水を与える。
- 根の生長とともに与える水(ぬるま湯)の量も増やすようにする。
- 抑制栽培・・・水分過多の時は蔓がどんどん伸びてしまう(節間が開いてしまう)。適度に萎れさせることが大切。夕方、鉢の表面が乾いているように水を与える。
- 本鉢前期・中期は抑制栽培。萎れさせる。後期(7月18日頃から)は大量の水やり。
- 薄めの液肥を回数多く。→植物の肥料吸収がよい。
- 目安…6月1日〜6月15日(1,000倍)
6月16日〜7月12日頃(500倍)。以降状況を見て。
7月上旬、500倍一日2回施肥。
- 蔓の伸びを抑えるため、7月初旬より約十日間、朝夕に液肥を与える。
- 雨の日にも液肥を与える。雨の日は無機肥料を倍濃度で少量与える。
- 頂芽優勢の整理を利用しながら栽培する。
- 蔓先が花芽化してしまい、これ以上蔓が伸びなくなってしまう状態。
- 紅・白の苗は芯止まりを起こしやすいので、要注意。
- 蔓先が白みを帯びて来たり、葉が急に小さくなったり、…
- 対策…肥料は控え、水のみを与えて様子を見る。
- すぐに本摘芯せず、3〜4日程度そのまま蔓を伸ばし、それから摘芯する。
- 数日かけてゆっくり頂上まで切り戻してくる。
- 各人により、撒布する薬剤、回数など違って当然ですが、日比谷に持ち込む前、日比谷から持ち帰った後など必ず撒布する。
- 撒布していないと、開花時や、種子を取ろうとする際に収穫に大きな差が出てくる。
6 種子の収穫に協力ください
種は会の命です。交配するとまで言わなくても、セルフによる自家受粉の種をしっかりと採りたいものです。
7 種の保存
莢・花柄が茶褐色化したら採種。しばらく乾かし(3週間〜1ケ月)、後、乾燥剤を入れ保存する。冷蔵庫内保存も可。
関連項目
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初版:2013年6月16日